Soul of Weed

好きなこと 好きなもの 徒然と

No.9 不滅の旋律

初演のときからずっと観てみたかった作品。

11月28日(水)に念願叶って、No.9を観劇できました。今回の再演は、本当に本当に嬉しかったし、ありがたかったです。

チケットを確保できたときには、夢みたいだなと思って。発券してチケットを手にしたときに、やっと現実的な嬉しさがあふれでできました。

そんなこんなで、ソワソワしながら3ヶ月ほどを過ごし、前日は眠れるかしらと思ってたのですが、思いの外ぐっすり(笑)意外と根性の座っていた私です。

東京まで観劇に行くのは初めてで、すごくワクワクしながら新幹線に乗ったのですが、東京に着く頃には緊張してドキドキに…

 

客席に着いてからも、ずっとソワソワしてました。思っていた以上に舞台に近かったこと。そして今回、観劇するにあたって「隣の席になった方に話しかけてみようかな」とか考えていたのですが、全くできず。

理由は、私が人見知りなのが一番大きいのですが…隣の席が同い年くらいの男の子だったから。ちょっと、ビックリしたんです。なんとなく、女性が多いのかなと思ってたので。でも、客席が埋まってきたのを見渡してみると、男性客の方も多くいて「舞台として認められてるんだな」と改めて感じることもできました。

 

結局、話しかける勇気は出ず。座席でパンフレットを開いてみて、期待はさらに膨らみました。

会場が暗くなると同時にザワザワとしていた空気が緊張感のある空気に変わる、あの瞬間がすごく好きです。現実の世界から離れて、舞台の中の世界に飛び込んでいける、切り替わりの時間だなと思っています。

 

観劇をして、まず一番の感想は

声ってこんなにも響き渡るものなんだ

吾郎さん達、役者さんの声も、合唱隊の皆さんの声も身体に振動として伝わってきて、心の中まで揺さぶられるような感覚で。生の舞台の醍醐味を全身全霊で味わいました。

役者さんも合唱隊の皆さんも、全員が舞台を楽しんでいるのが伝わってきて、その熱量に圧倒されました。「観劇ってこんなにも疲れるものだったっけ」と思うくらいに引き込まれ、魅了されました。

 

マリア・シュタイン

彼女は実在の人物ではないのですが、彼女が居なければ第九は完成しなかったのではないかと感じるほど、説得力のある存在でした。いつもまっすぐ前を見つめているのですが、若く無邪気なまっすぐさから、理想を貫くための芯の通ったまっすぐさへの成長があってそんな部分も、説得力に繋がっているのだろうなと思いました。剛力さんの凛とした立ち姿、明るい雰囲気がマリアにぴったりでした。

ナネッテ・シュタイン・シュトライヒャー

彼女は当時にはよほど珍しかったであろう、女性のピアノ職人。自分のことを、女であるという偏見を持たず、良いピアノを作る職人として見てくれた音楽家としてのルイスを心から敬愛していたのだろうなと。偏見に立ち向かっていくことも、多かったんだなと感じさせる気の強さ、曲げない信念。かっこいい女性です。

村川さんの少し低めの声がナネッテらしさをより強くしていたような気がします。

ヨゼフィーネ・フォン・ブルンスヴィク

ルイスから献身的に愛された女性。ある意味この舞台で最強の人かもしれません。ルイスは絶対にNOと言えないのですから。彼女は女としてではなく、家族としての幸せをとって生きている人なんだろうなと思っています。娘として、父を裏切れない。母親として、子供達を少しでも幸せにしたい。その優しさをルイスは自分に向けて欲しかったのでしょう。演じている、奥貫さんの上品な雰囲気がヨゼフィーネの貴族としての気品にはまっているなと感じました。

カスパール・アント・カール・ベートーヴェン

カスパールはルイスのことを理解しているからこそ、一緒に居続けることに疲れてしまったんだろうなと思いました。なんというか、ルイスの横暴さに諦めてしまっている感じ。それでも、兄として頼りにもしてたからカールの後見人になってほしかったのだろうなと。橋本さんは、連続テレビ小説 ちりとてちん の主人公の弟役の印象がすごく強く残っていたので、なんとなくちょっと頼りない若者のようなイメージだったのですが、カールに寄り添って、見守っている姿は優しいお父さんそのものでした。

ニコラウス・ヨーハン・ベートーヴェン

ニコラウスはおそらくルイスに一番、振り回された人かなと思っています。カスパールのようにスパッと考えを切り替えられず、おかしいと思うことは、突っ込んでしまう。兄として尊敬もしているけれど、理解できない部分も多かったんだろうな。あんなにも横暴なルイスと暮らしているのに、優しくてひねくれてなくて、だからこそ苦労は耐えないだろうと。鈴木さんはこの舞台で初めて知った役者さんだったのですが(無知で申し訳ない)舞台で活躍している方だけあってすごく声が通って素敵でした。

ヨハン・アンドレアス・シュトライヒャー

こんなに優しい人はなかなかいないと思います。柔軟さがあって、包容力もあって素敵な男性です。この舞台で一番、仲良くなりたい人。ナネッテのことを、心から愛して、理解している。アンドレアスが旦那さんだから、ナネッテもピアノ職人として誇りをもって働けたのだと思います。岡田さんの少しコミカルなのに落ち着いた雰囲気がまさにアンドレアスでした。

ヨハン・ネムポク・メルツェル

メルツェルは居るだけで面白い(笑)楽しい人です。あれだけ、ルイスと本気でぶつかってくれる人もなかなかいないと思います。干しぶどうがポケットに入ってたり、あの髪型が地毛だって自己申告してみたり。重苦しい雰囲気も一瞬で笑いに変えてみせる。片桐さんの才能ですね。コメディアンだからこその間の取り方とか雰囲気とか。お気に入りのキャラクターです。

フリッツ・サデイル

この舞台に登場する人の中で、一番自分に近い存在だと思いました。時代や世情に流されて生きている。だからこそ、フリッツの台詞はどれもこれも胸に刺さって。屈服しない、そんな風に宣言はしてみても、それは強がっているだけだったり。深水さんの舞台映えする長身にあのマント、バサッと翻して歩き去るのがかっこよかったです。あの低くて男らしい声もフリッツたらしめてたなと思いました。

ヨハン・ヴァン・ベートーヴェン

どうしようもない、お父さんなのですが、それでも、たぶんルイスのことを愛していたのも嘘ではないのかなと思います。愛情の表現がだいぶ間違っているけれど。以前、観劇した"モーツァルト!"のお父さんレオポルトと少し被る部分もあって、息子のことを「自分が作り上げた天才だ」と豪語するあたりなど…ヨハンもレオポルトも息子を大切に育てようと束縛しすぎて、関係がこじれてしまっているんですよね。親子って難しい。

ステファン・ラヴィック

お父さんと顔が似ていると言うだけで、ルイスからひどい扱いを受ける、にも関わらずその部分にまで興味をもって何度も訪ねてきたり、ニコラウスの面倒も見てくれていたりヨハンとは正反対のいい人。でも、ちょっと変わり者なのかな。羽場さんを舞台で拝見するのは2回目なのですが、やはり良い声。2つの役柄も纏う雰囲気さえがらりと変わってすごいなと思いました。

ヴィクトル・ヴァン・ハスラー

ヴィクトルはルイスのことが大好きなんですね。ルイスの音楽を心から愛して、理想を認めてくれている。だから、ルイスも彼には心を開いた態度で接していたように感じました。長谷川さんは、どこか堅い役柄のイメージだったのですが、ハイテンションかつ陽気なヴィクトルがあまりにも嵌まっていて、役者さんのポテンシャルってすごいです。

ヨハンナ

ヨハンナはこの舞台に登場する女性のなかで唯一、ルイスとぶつかり続け愛されなかった人。舞台を見る限りでは、あんなにも嫌う理由はないように思うのですが、パンフレットで広澤さんが触れられていたように、何か問題があったから、あそこまでルイスと対峙したんだろうなと。広澤さんの優しい雰囲気なのに声は凄みのある感じが好きです。

カール・ヴァン・ベートーヴェン

カールが感じていた息苦しさは尋常じゃなかっただろうと思います。期待に応えられないもどかしさ、本当の自分をみてもらえない哀しさ。天才の側にいられる人って限られていると感じました。のし掛かってくる重圧を押し退けられるか、感じない人じゃないとつぶれてしまう。小川さんはカールを以外にも様々な役で出ていて、すごく器用だよなと。山崎くんもすごく声が通っていて、まだ小さいのにすごいなと。

ルートビッヒ・ヴァン・ベートーヴェン

とにかく横暴な人で、音楽の才能がなければこんなに周りの人から愛されただろうかと思ってしまうほど。でも、自分が好きなものにはひたすらに献身的で。どこか憎みきれない人でした。最後のシーンは本当に幸せそうに指揮をしていて、音楽家としては最高の人物だったのだろうなと。吾郎さんは、想像以上に低くハリのある声で、舞台のために鍛練を積んでいるんだなと感じさせられました。

あれだけ、動き回って、感情を爆発させて、よく1日2公演もやりきれるなと。努力の賜物なんでしょうね。

 

舞台の上に居る、皆さんがその人物そのものに見えて、日本にいるはずなのに、時代も国もなにもかも越えて行ったような気持ちになれました。とにかく、感動です。

夢に出てきそうなくらい、沢山の五線譜もルイスの心の中を表しているようで。最後、天に昇っていく五線譜を見て、ルイスが心から喜んでいるように感じられました。

他にも細やかなところまで舞台装置や小物、衣装も作り込まれていて、目がいくつあっても足りません。

 

そして、総立ちのスタンディングオベーション。鳥肌が立ちました。拍手喝采ってこういうことを言うんだなと。

 

どうしてももう一度だけでも観てみたい!

今回は、もう行くことができないので、また再演があることを願っています。

 

2018年11月28日(水)

赤坂ACTシアター  H列2番

1幕 14:00~15:10

2幕 15:30~17:10

舞台『No.9 -不滅の旋律-』公式サイト

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