Soul of Weed

好きなこと 好きなもの 徒然と

正欲

生きていくうえでの"正解"って何だろうかとよく考える。

きっと、自分の人生だけを捉えた答えならば自身が幸せであるかどうかが基準何じゃないかなと思うのだけれど。その"正解"が世間にとって"正解"であるかは別のことであって。他人から見たら"正解"の人生だって、その人にとっては"不本意"な人生なのかもしれない。

 

マジョリティとマイノリティどちらに属すれば幸せかなんてことには答えはないと思うけれど、生きやすいのは圧倒的にマジョリティに属していることだろうと思う。世間の思う、"普通"のことが当たり前にできる人。それが苦痛でない人。

私は、歳を重ねるごとに"普通"であることを強く求めるようになっている気がする。自身がきっと"普通"ではないことに気づいてしまった怖さ。集団生活を求められる中で"普通"でいられないことを指摘される怖さ。外向きの自分を作らなければ、話が出来なくなった。気がついたら、家の中でも外向きの自分の話しか出来なくなった。

きっと、私はクィアなのだと思う。誰かと交際したいと思ったこともないし、その未来も想像できない。その手の話題を向けられる度、愛想笑いをして「何ででしょうね~」とか言ってる自分がすごく嫌いだ。でも、怖いのです。「あなたはおかしい」と自分以外の人間に指摘されてしまうことが。

 

夏月や佳道達の抱える気持ち、何と無くだけれど自分の抱える生きにくさと重なって、すごく苦しかった。今の世の中ではLGBTQに属する人達の理解は多少なりとも進歩しているのではないかなと思う。まだまだ、偏見も多いとは思うけれど。ただ、Qに対する理解って広がっていくのだろうかと漠然と思う。少数派にすら属することが出来ないほどの少数派。啓喜のように「あり得ない」と切り捨てる人のが多いのが現実だと思う。正直、私は自分のもつ性的な感情の部分において誰かに理解してもらえるとも、肯定してもらえるとも思っていないし、それで良いとも思っている。ただ、否定しないでほしい、干渉しないでいてほしいだけなのです。夏月や佳道のように、「この世界で生きていくために手を組む相手」が見つかったら、どれだけ救われるだろうとは考えるけれど。でも、家族にも友人にも本当の自分の話をする勇気は無い。知られないまま、仮面の自分をうまく生きていく方法をいつだって探してる。

 

啓喜は、悪い人ではないのだろうと思う。ただ、彼の思う"普通"が世間の思う"普通"と合致して生きてこれただけなのだろうと。部屋が散らかっていようと、食事がレトルトだろうと文句は言わないけれど、準備してくれたことや車で送ってくれたことに対してお礼も言わない。何と言うか、周囲に対して温度が低くて無関心な人と言う印象。きっと彼は自分のことを"正解"だと思って生きている人だろうと思う。でも、彼は間違ってはいないかもしれないけれど決して"正解"なわけでもなくて、ただ世間の正論を正義としているのだろうと。彼は夏月の「当たり前のこと」を聞いて、どう感じたのだろうか。真っ黒な空洞の瞳が怖かった。

 

夏月の感じる生きにくさ、どこかで自分も感じたことのある息苦しさだなと思った。祖父母とテレビを見ていたとき。ショッピングモールで話をしているとき。同級生の結婚式に出席したとき。息苦しいと思う。佳道とは本当に良きパートナーとして付き合っていたのだろう。この世界の"普通"に擬態して生きて行く為の愛。性的な感情はなくとも、彼女たちの間に愛情はあったように思うのです。きちんと瞳に覇気があったから。啓喜に伝えた「居なくならないから」に私の気持ちも救われた気がしました。

 

佳道の言葉。朝起きたとき別の人になってはいないかとか、無事に死ぬ為に生きているとか、知っている感情だった。やっと見つけた自分たちが自分たちらしくいられる場所。きっと失うのが早いかもしれないことに気づいてた。啓喜と対峙した時の彼の落ち着きが悲しかった。

 

大也は壁を作ることで、自分を守ってきたのだろうと思う。八重子に背中を押されて、佳道たちと出会って、やっと彼が彼として生きれた時だったのに、悔しいだろうなと思う。ただ、淡々と啓喜に自身の事実を話して行く姿に息が出来なくなった。

 

八重子は真っすぐな人だった。華奢な丸まった背中と不安げに窄められた唇。あんなに怯えているのに、言葉も行動も一番真っすぐだった。大也のこと「大事な人」と表現したこと。大也に自分の気持ちを打ち明けたこと。強くて優しい人だと思った。

 

「誰もひとりじゃないと良い。」そんな日が来れば良いなと思う。本当の意味で誰もが孤独じゃなくなる日が来たら良いなと思う。

 

P.S.

上映後の舞台挨拶は、打って変わって和やかで優しい空気ですごくホッとしました。優しい人たちが集って作り上げられた映画なのだなと。