Soul of Weed

好きなこと 好きなもの 徒然と

サンソン‐ルイ16世の首を刎ねた男‐

No.9と同じ脚本、演出、音楽の座組と知って

どうしても観てみたかった作品。

チケットのページを開いて、少し悩んだりもしたけれど、この時期に遠出を出来るはずもなく。「配信はありません」の文字に絶望し。

いつか、再演があれば…なんて思っていたのですが。

災い転じてと言って良いのかは分かりませんが、緊急事態宣言の発令の影響を受け、配信が決まったとき、嬉しかった。地方組も観れるんだって。ホッとしました。

劇場での出会いを大切に。その気持ちも十二分に理解できるのですが、先の見えない、いつになったら劇場に行くことが出来るかも分からず、寂しくて悔しくて仕方の無かった私にとっては、感謝してもしきれないくらい配信はありがたかった。心の救いでした。

 

サンソンを観劇して、一番に思ったことは

「配信で良かった」でした。

基本的には、やっぱり生が一番だって思うのですが、あまりにもテーマが重かった。きっと劇場で初見だったら席から立てなかっただろうと思います。それくらい、ずしりと心に入り込んでくる作品でした。

 

サンソンの死刑に対する思い。そして、自分の請け負う仕事へ対する思い。矛盾するようで、一貫性のある思い。

ルイ16世を斬首したあと、狂ってしまったかのように次々と刑を執行する姿が悲しくて、やるせなくて。そして、年老いてからナポレオンと対峙した際の「仕事場ですから」の言葉。若き日のサンソンが口にした「誇りをもって」という言葉。真っ直ぐな人だったのだろうと思いました。だからこそ、辛かったろうと。

少しでもよい方向へと考え、製作した断頭台。もしかしたら、そのせいで死刑が増えたのではと思い悩む姿。ルイ16世に謁見し話を聞いてもらい、賛同してもらったときの優しい表情。色々な場面が記憶に焼き付いています。

 

初めは同じ方向を向いていたはずのトビアス、ジャン、サン‐ジュスト。最後は3人バラバラの道を歩いていったこともすごく印象的でした。

結局、最後までより良き世の中への気持ちを捨てなかったのは、一番激動だったとも思えるジャンで。エレーヌが居てくれたからなのか、彼自身が強かったからなのか。彼の生き方が格好いいなと思います。ジャンとエレーヌは混沌とした世界のなかでぶれることなく真っ直ぐに生きている、希望のような存在に思えました。

ビアスは最終的にギロチンの販売を商売にしていて、なんだか少し寂しかった。刑に対する思いが変わってしまった感じがやるせなかった。

サン‐ジュストはロベスピエールと共に革命の波にのまれてしまったんだなと思いました。死刑廃止や市民の平等な暮らしを願っていたはずが、いつしか王室への敵対心だけに変わり。自分達が先導してきたはずの波にのまれて処刑台に立たされて。人の強さと弱さの象徴のように感じました。結局、自身が皇帝となって戻ってきたナポレオンもそうかもしれません。

 

フランス革命の描写を観ていて、ものすごい大きなエネルギーを感じて、いまを生きてる私たちにあれだけの情熱が有るのだろうかとふと思いました。国柄もあるのかもしれませんが、あそこまでの勢いや情熱を持った若者って少ないんじゃないかなと思うのです。(かく言うわたしも大多数に属してしまっているのですが。)あれだけのエネルギーがあれば自分達の生きる世界って変えられるんだろうなとも思うのです。

 

話変わって、舞台ならではの演出が好きです。スローモーションがあって、プロジェクションマッピングがあって。発見するのが愉しい。あぁ、舞台だなと思わされます。

カーテンコールも大好きです。舞台の世界に生きていた役者さん達が徐々にこちらの世界に戻ってくる感じ、大好きです。

 

 

自分の心の弱いところに訴えかけてくる作品で、しんどかった。でも、観て良かったとすごく感じる作品で。うまくまとめられないけれど、生きていくという大きな課題に対しての問題提示をされた気がしました。

 

自分の生き方に誇りをもてるか。

自分の仕事に誇りをもてるか。

「誇り」とは何なのか。

今はまだ答えにたどり着けませんが、一生懸命考えることが第一歩かなと思いました。

 

まとまってないけど、ひとまず感想を。

 

追記

フランス革命を題材にした作品は

マリー・アントワネット」とか「1789‐バスティーユの恋人たち‐」とか「レ・ミゼラフブル」とかミュージカルで触れてきたけれど、マリー・アントワネット達の視点か民衆からの視点かどちらかからの視点で描かれていて、ちょうど間に当たる視点がサンソンだったのかなと思います。歴史的にもルイ16世マリー・アントワネットなど王族や革命を起こした市民は脚光を浴びるけれど、狭間で戦っていた人達はなかなか注目されることは無かったように感じます。でも、その立場の人がいたからこそ歴史が成り立ったわけで。

やっぱり、学校の勉強だけでは分かり得ないことってたくさんあるんだよなと。

 

そして、この作品がストレートプレイだったこと。個人的にはミュージカル大好きなんですけれど、この作品はストレートプレイで良かったなと思います。上手く言えないのですが、ミュージカルだと良くも悪くも全然違った感じになっちゃうだろうなと思うのです。まっすぐに飛んでくる台詞があの世界観を完成させたんだろうと感じました。

 

 

 

 

2021年6月27日(日)

Streaming+配信

12:00~