Soul of Weed

好きなこと 好きなもの 徒然と

半世界

「描いた人生になってる?」

今、そう問われたら私は答えに詰まってしまいます。だからこそキャッチコピーを見たときに、少し身構えると共に観てみたいなと漠然と思いました。今の自分ときちんと向き合うきっかけになるんじゃないかなと。

 

"諦めるには早すぎて、焦るには遅すぎる"

人生においてそういう場面ってたくさんあると思うのです。映画では39歳を例えていたけれど、もっと若い人でも年配の方でも誰にでもありえることだと思います。そんな題材だからこそ心に響くのですね。どこにでもあるはずの日常。同じ時間軸に生きている人たちの人生の中のわずかな時間を切り取った作品。すごく温かさを感じました。

 

紘は意固地で、どちらかというといろんなことに目を向ける余裕がなくて目の前のこと(仕事)だけで手一杯な印象。かと言って本当に関心が無いわけじゃなくて、ただただ不器用なひと。優しいところもあるのだけど、ちょっと配慮が足りなかったり口下手だったり。瑛介が「自分の決めたことに後悔したくない一心で」と言っていたのがまさしくなんだろうと思いました。そんな紘のことを、瑛介も光彦も初乃さんもみんな理解してくれてるんですよね。出会いに恵まれていたんだなと。

瑛介は、責任感が強いひと。でもって彼も不器用。内に溜め込みすぎて、ふとしたきっかけに爆発してしまうんだろうなと思いました。瑛介がいてくれたから、紘は明と歩み寄ることができたのだろうし、この映画の最大のキーマンですよね。「お前たちは世界を知らない」「お前たちのせいだ」この台詞がすごく突き刺さりました。自分には関係ないって済ませてしまっていることが、誰かを苦しめているかもしれない。自分の無責任さを言い当てられたようで、苦しかった。でも、紘の言うように自分達の今いる世間だって"世界"なわけで、いろんな事がある。向き合っていかなきゃならないことは山積みで、ひとつひとつ理解しようとする努力が大切なのかなと思います。なかなか、出来ないのが現実なのですが…

光彦は、不器用な2人を繋いでいられるひと。たぶん、一番器用なんですよね。そして、すごく優しい。明のこともきちんと見てくれているし、紘のことも、瑛介のこともみんなを見守ってる。身近にいてほしい、いるだけで安心させてくれる、そんな存在だと思います。こんなひとになれたらと思う、私にとって1番憧れを感じるひとかもしれません。

初乃さんは、紘の不器用さを理解してくれて寄り添ってくれてる。明のことも。男性陣より、ある意味男前で肝の据わったお母さん。でも、1番印象に残ってるのは葬儀のときの「私も一緒に行く」と言った時の台詞と表情。強くて、紘を支えているように見えたけど、お互いがお互いを必用としててんだなとひしひしと感じさせられました。「もっとお弁当作らせてよ」も忘れられない台詞。毎日続くことに、ちゃんと幸せを感じている、素敵なひとだと思いました。私はいつか初乃さんのように、心から愛する人に出会えるのかななんて考えたりもしました。

明は、今現在の私の立ち位置に一番近いひと。でも、最後は私より大人だったかもしれない。紘に似て不器用で、意地っ張り。仕事を引き継ぐ決意、なかなかできることじゃない。まだまだ、いてくれるはずだった紘が唐突にいなくなってしまって、大人にならざるをえなかったのかもしれない。少しでも、紘と向き合う時間があって良かった。自分の夢と父親である紘の夢、二つを背負っていく覚悟を決めたんだなと、すごく格好いいなと思いました。

 

エンドロールの留守番電話、優しい話し方で、少しいたずらっぽくて、すごく好きだなと思いました。もしかしたら、1番泣いたのはエンドロールかもしれません。温かくて、優しくて、何でか泣けてしまう。明るくなる前に泣き止みたいのだけれど、出来ず…横の席の男性に若干ひかれたような…(笑)

 

 

1回目はなんの前情報もなしに、2回目はノベライズ本を読んでから観賞したのですが、1回目に疑問に思ってたことを補足できたり、聞き取れなかった台詞を確認したりして、2回目は映像の美しさや音の美しさ、豊かな自然の風景も存分に感じることができました。本当は、感じたままに受けとるのが良いのかなとも思うのですが、細かい設定とか諸々気になってしまうたちなので、ノベライズ本の補足はありがたかったです。

 

うまく言葉にまとめられないのだけれど、一番思うことは「観に行って良かった」ということ。今の自分に問いかけてくるものがたくさんありました。

自分の生きてる場所だけを世界と捉えるのは狭すぎる考え方、かといって知らないところが世界かといえばそうでもない。人生を全うしても、きっと半分を知ることができれば幸いなんだろうなと。半分の世界ですら向き合うことは難しい。

 

何年後かに、「描いた人生になってる?」と問われたとき、胸を張っていられる生き方をしたい。描いた通りじゃなくて、構わない、「いい人生だよ」って胸を張れるように。自分が納得のいく人生を歩けたらいいなと思ってます。

 

言葉にできない思いもたくさんあるけれど、

感じたことをつらつらと。

 

2019年2月17日(日)

ミッドランドスクエアシネマ

スクリーン7 C-12

16:30~18:30

 

2019年2月20日(水)

TOHOシネマズ浜松

スクリーン3 H-16

12:45~14:45

 

映画『半世界』公式サイト